生成AIを業務に導入したい——そう考えた企業が最初にぶつかるハードルの1つが、「入力したデータはどこに保存されるのか」という問題です。
本記事では、日本企業が生成AIサービスを利用する際に気にするデータ管理の実態について紹介します。
なぜデータの保存場所が重要視されるのか
生成AIサービスを利用する際、ユーザーは質問や指示として様々なテキストを入力します。業務利用の場合、そこには社内文書の内容、顧客情報、プロジェクトの詳細など、機密性の高い情報が含まれることも珍しくありません。
この入力データが「どこに」「どのように」保存されるのかは、企業のセキュリティポリシーや法規制との関係で重要な検討事項となります。
日本企業が気にするポイント
日本企業が生成AIサービスを評価する際、データ管理について以下のような点が確認されることが多いです。
1. データはクラウドに保存されるのか
多くの生成AIサービスはクラウドベースで提供されています。入力したデータがクラウド上に保存されるのか、一時的な処理のみで削除されるのかは、企業にとって重要な確認事項です。
一部のサービスでは、入力データをモデルの学習に利用しないオプションや、エンタープライズ向けのプライバシー設定を提供しています。
2. どのクラウドサービスを利用しているか
生成AIサービスがどのクラウドインフラ上で動作しているかも確認されるポイントです。AWS、Azure、Google Cloud Platformなど、主要なクラウドプロバイダーにはそれぞれセキュリティ認証や運用体制の違いがあります。
自社がすでに利用しているクラウドプロバイダーと同じインフラ上で動作するサービスを選ぶケースもあります。これにより、既存のセキュリティポリシーやデータガバナンスの枠組みを適用しやすくなります。
3. データリージョンはどこか
「データリージョン」とは、データが物理的に保存されるデータセンターの所在地域を指します。日本企業の場合、データが日本国内のリージョンに保存されることを求めるケースが多く見られます。
この背景には、以下のような理由があります。
- 法規制への対応: 業種によっては、データの国外移転に制限がある場合があります
- 社内ポリシー: 情報管理規程で国内保存を義務付けている企業も存在します
- 取引先からの要求: 顧客や取引先から、データの所在地について説明を求められることがあります
4. データの利用目的と保持期間
入力したデータが何に使われるのか、どのくらいの期間保存されるのかも確認されます。
- モデルのトレーニング(学習)に使用されるか
- サービス改善のために分析されるか
- 処理後に自動削除されるか
- ログとして保持される期間はどのくらいか
エンタープライズ契約では、これらの条件をカスタマイズできる場合もあります。
主要な生成AIサービスの対応状況
参考として、主要な生成AIサービスがどのような対応をしているか概要を紹介します(2025年12月時点の公開情報に基づく)。
注意: 以下の情報は各社の公式ドキュメントを参照していますが、サービス内容は随時更新されます。導入検討時には必ず最新の公式情報をご確認ください。
OpenAI(ChatGPT / API)
- ChatGPT Teamプラン以上では、入力データをモデルトレーニングに使用しないオプションあり
- API利用の場合、デフォルトでトレーニングには使用しない設定
- データリージョンの指定については、Azure OpenAI Serviceを利用することで対応可能
情報源: OpenAI Enterprise privacy、API data usage policies
Microsoft Azure OpenAI Service
- Azure上で提供されるため、Azureのセキュリティ・コンプライアンス基準が適用される
- 日本リージョン(東日本・西日本)での利用が可能
- 入力データはモデルトレーニングに使用しないことが明示されている
- 既存のAzure契約・セキュリティポリシーを適用可能
情報源: Azure OpenAI Service - Data, privacy, and security
Google Cloud(Vertex AI)
- Google Cloudのセキュリティ基準が適用される
- 東京リージョン・大阪リージョンでの利用が可能
- エンタープライズ向けのデータ処理条件を設定可能
情報源: Vertex AI のデータ ガバナンス
Anthropic(Claude)
- API利用では、入力データをモデルトレーニングに使用しないことが明示されている
- Amazon Bedrock経由で利用する場合、AWSのセキュリティ・リージョン設定が適用される
情報源: Anthropic Privacy Policy、Amazon Bedrock - Claude
企業としての対応アプローチ
データの保存場所に関する懸念に対して、企業は以下のようなアプローチを取ることが多いです。
エンタープライズプランの利用
個人向けプランではなく、法人向けのエンタープライズプランを契約することで、データの取り扱いについて明確な条件を設定できます。コストは上がりますが、セキュリティ要件を満たすための選択肢として検討されます。
クラウドプロバイダー経由での利用
OpenAIのモデルをAzure経由で利用する、ClaudeをAWS Bedrock経由で利用するなど、自社が信頼しているクラウドプロバイダーのインフラ上でサービスを利用するアプローチです。既存の契約やセキュリティポリシーを活用できるメリットがあります。
利用ガイドラインの策定
サービスの仕様を完全にコントロールすることは難しいため、社内での利用ルールを策定するアプローチも取られます。「機密性の高い情報は入力しない」「個人情報を含むデータは利用対象外とする」といったガイドラインを設けることで、リスクを管理します。
オンプレミス / プライベートクラウドでの運用
より厳格な管理が必要な場合、オープンソースモデルを自社環境で運用するアプローチもあります。コストと運用負荷は増えますが、データの保存場所を完全にコントロールできます。
まとめ
企業が生成AIを利用する際、入力データの保存場所は重要な検討事項です。日本企業では特に、以下の点が確認されることが多いです。
- データがクラウドに保存されるかどうか
- どのクラウドサービス上で動作しているか
- データリージョンはどこか(日本国内かどうか)
- データの利用目的と保持期間
これらの懸念に対しては、エンタープライズプランの利用、クラウドプロバイダー経由での利用、社内ガイドラインの策定などのアプローチが取られています。
生成AIの導入を検討する際は、技術的な機能だけでなく、データガバナンスの観点からもサービスを評価することが重要です。
最終更新日: 2025年12月28日
執筆者: 生成AIリテラシー診断チーム
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